『ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス』
この巻からは新展開。思えばかつてこの巻の表紙を見た時にこの新キャラは誰だろう?と思ったものだけど、それがこうしてSAO以外のゲームの世界へと繋がっていくとはなぁ。ただ現実世界へと帰還したというだけでなく、とても”世界が拓けた”感じがあって良いなぁ。キリトが進む道はアスナへと繋がっていて、未だ囚われ続ける明日奈もまたキリトと深い部分で通じ合っているのがなんとなくSAOを戦い抜いた2人にとってとても誇らしく貴いことのように思えます。この巻のラストで歩み出したアスナの姿を見てそんな印象を強く感じました。たぶんこの印象が強まっているのはアニメ視た影響だろうなぁ。本編ではアスナはまだ未登場だけど、OPで共に戦って歩んでいく姿を見てるとそんな胸の高鳴りを覚えてしまう。
一方で新ヒロインとなる直葉=リーファがまた魅力的で参るよなぁ。キリトに妹がいるって話は前からされてたし、先に読んだ『アクセル・ワールド』10巻の両作品のクロスオーバーで直葉の名前も知ってはいたけれど、それがこんなストイックと思わせながらも内心真っ直ぐな想いを抱えた女の子だったとは。
現実世界で和人との距離感に悩む直葉が奇しくも同じゲームを通して、今度はSAOと違って現実世界の顔が分からないからこそ、お互いのリアルを知らずに兄妹ではない関係を築いていくのが面白いなぁと思うし、共に戦い旅をする中でキリトに対して胸の高鳴りを覚えていくリーファの姿が魅力的だなと思う。彼女はキリトが和人であることを知ることになるのかってことも気になるけど、仮に知らないままでもリーファはリーファとしてキリトとの想いの行く末を視たくなるような。
んーなんだろう、現実での直葉が描かれた上でリーファの姿を見ていると、彼女が心の奥底に秘めてる気持ちが露わになっているような感じがするんだよなぁ。作中でも言われてるように大胆さ五割増しで、キリトに対しても兄妹としてではなく仲間として屈託なく笑い合って、それでいて胸の内には高鳴る気持ちを抱えているって言う一面がとても可愛いなと思う。てゆか、直葉のゲーム内の化身たる姿として空を自在に翔ける妖精の羽を持った剣士というのはとても映えるよなぁ。
キリトは最強でヒロインとのフラグ立てまくりなのは相変わらずだけど、SAOで得た経験がただの強さって意味だけでなく、ただアスナを救い出すために、VRMMOという”現実”を『生きる』ために、そしてパーティーメンバーを誰も殺させないために戦う姿には揶揄ややっかみ、劣等感を超えた主人公としての魅力を感じられるようになってきた気がします。
最初に書いたアスナとの間にある繋がりに対して感じる胸の高鳴り、その裏にある彼の抱えた痛みと昂揚感を合わせたところにあるのがたぶんこの作品の正の面の魅力の捉え方なんだろうなと、なんとなく思う。今までは負の部分で捉えてしまいがちだったけれど。いや、今もその部分は否定しないって言うか、個人的にはそういう自分の負の部分に裏打ちされてるからこそ強い魅力が羨望へと裏返っていくのも確かなんですけどね。とまれ、そんな自分の変化が読んでて少し新鮮に思えたりもしました。
・・・でも正直直葉/リーファがすごく魅力的なので彼女と和人/キリトの関係がどうなるのか気になるなぁ。ユイに浮気するなって怒られそうだけど(苦笑)でも、直葉としては踏み込みきれなくても、リーファとしては一歩踏み込んだ結末もあり得るんじゃないかって気がしなくもない。いや、リーファが踏み込んだら直葉もまた彼女の性格から考えて踏み込むのかな。そこはまだ分からない。勿論キリトの隣はずっと特等席なのは分かった上で。
この巻が次巻に続く内容になっているのは読んでる途中で「あーこれはこの巻じゃ終わらないな」と思ったし、先に次の巻の表紙を見ちゃったことで「あーやっぱり続くんだよね」と思ったけれど、今は純粋にこのALOの結末が楽しみだなぁ。今回はゲームの世界でも現実世界でも明確に倒すべき相手がいるから、目指すべき場所=アスナのいる場所が分かっているから純粋に読んでて昂揚感を覚える。続きが楽しみ。