『ソードアート・オンライン〈4〉フェアリィ・ダンス』
ようやく意識がアルヴヘイムから現実に還ってきました。あぁ、、、最高に面白かった!!そして声を大にして云おう。リーファ/直葉が可愛過ぎる・・・!!!
この巻のあとがきで川原先生がデスゲームという仕掛けが無くてもMMOをプレイしたいと思えるような楽しさを物語として再現できないか、ということがこの『フェアリィ・ダンス』編の大きなテーマだったと書かれてますが、その試みは大きく成功しているということを今の自分の気持ちが裏付けていると思います(苦笑)
1巻ではある意味構成が変則的だったせいで実感する暇がなかった部分、あるいは描かれなかった部分。誰かと一緒に初めて見る世界で旅をして、共に戦って、目に移る光景に万感を抱いて。本当にMMOをやってみたいと思えるような”世界の広がり”を目の当たりにしました。それこそキリトと同じ視点で。そしてこのALOの世界で、彼の隣にはいつも”彼女”がいた。だから自分にとってこの作品を読んで感じたALOの世界の魅力には彼女の輝きが傍らにあったことを言わずにはいられません。奇しくも彼女が作中で語った≪アインクラッド≫での記憶を持たないことの代わりに彼女だけが得たアルヴヘイムの世界でキリトと出逢い一緒に旅をした記憶が特別なのと同じように。
前巻や、この巻だとヨツンヘイムで一緒に旅をしてる辺りで特にそう感じたけれど、リーファのキリトとのやり取りはリアルでの直葉の時よりも茶目っ気が増してたりして、その辺からも「あぁ本当に楽しんでいるんだなぁ」と。そんなふうに思えるんだよなぁ。リーファがキリトに惹かれていく気持ちの裏に直葉が現実世界で和人を諦めようとする想いが無意識にあることは予期していたけれど、でも突きつけられた現実は彼女を前に進ませてくれたように思う。どうあっても、いずれはきっと事実を知ることになっていたと思うし(てっきりALOの中でアスナの姿を見て気づくのかな?と思っていたけれど、現実はそれよりも早かった)。てゆかですね、とかく自分の気持ちが止められなくてキリトに『告白』してしまう彼女が魅力的に過ぎた。その懊悩と切なさはたぶん彼女を一歩前へ進ませてくれると思う。彼女の内に芽生えた『萌え出たばかりの新緑のような儚さ』はきっといつか枝を伸ばし、葉を広げ、咲き誇って実を結ぶ。
それからそれから、言わずにいられないので書いておくけど、リーファに「キリト君」って呼ばれるのって物凄くくすぐったいと思うんですが!現実世界で『兄妹』であることを加味した上で考えると。キリトの正体を知った上でなお彼をALOの世界で「キリト君」と呼ぶのは彼女の区切りであり矜持なのだろうな。
そしてもう一点。ラストでキリトが彼女を新たなアインクラッドへ誘う時の台詞がもうね、格好良過ぎた。このシリーズを読んでて一番、というかたぶん初めて心底から「こりゃ惚れるわ」となんか実感まで伴って納得してしまった。まるで1巻でアインクラッドが75層までしか攻略できなかったことさえもがこの時のためにあったかのようだよ。
と、ここまでリーファの魅力を語ることにしか意識を割いてない気がするのだけれど、でもまぁこの作品の感想を書く上でそこは言わずにはいられなかった(苦笑) その一方でこの作品が持つMMOの楽しさを物語として描くという大きなテーマはきっと1,2巻から視たSAOの物語の一つの結末としても大きな意味合いを持つものだったんだろうなぁと思う。だって、この巻のラストではあんなにもキリトの前には彼が培ってきた絆、仲間たち、大切な人が共にいるのだから。だから読んでいてすごく満ち足りた気持ちになることが出来た。
自分は物語を読んでいて「その物語の登場人物たちの先を知りたい、彼らがこれから歩んでいく未来を視たい」と思うことが多々あるけれど、この『フェアリィ・ダンス』編は丸々2巻掛けて描かれた1巻のエピローグでもあるのですよね。そのラストで”世界”はこんなにも拓かれた。そういった意味でも込み上げてくる万感がありました。
1巻の感想で自分は「奇を衒わずに直球で描かれた少年少女、主人公とヒロインの恋」が何よりも印象的だったと書いたけれど、正にこの巻もまたそのキリトとアスナの物語、あの浮遊する城の世界で出逢って恋に落ちた少年と少女の物語の結末として、そしてそこから帰還して本当の意味で始まっていく和人と明日奈の物語の始まりとしてすごく象徴的に描かれていたなと思います。ALOの中でもそうだったけど、それ以上に2人の現実世界での”再会”は。
それを前にして劣等感を感じなかったかと言えば完全に否定はしないけれど、けれどもそれを抱えたままでそれでもなお現実を前へ向けて歩んでゆける姿に対して抱くのは眩しさや憧れと呼ぶものであり、その感情は自分の中では特別な位置を作品に占めさせるものなのです。
あーそれにしてもキリトとアスナ、和人と明日奈の物語はド直球だよなぁ。何あの学園生活でのやり取り。。と唸ったり悶えたりさせられたところでお弁当の中身がかつてSAOで一緒に食べたハンバーガーと同じであるというポイントを押えてくるのがずるいくらい上手い。その裏で一度現実世界での姿を見てみたいと思っていたシリカとリズベットが面白い協定張ってるのもずるい(苦笑) やってくれるなぁ。おかげですっごく感慨深くなってしまうじゃないですか。
そしてそんなアスナさん不動の正ヒロインたる物語の裏で、確実にこの『フェアリィ・ダンス』編のヒロインとしてリーファ/直葉がラストを特別な想いと共に描いてもらえたのも非常に嬉しかったです。いや、もうアスナと並ぶもう一人のヒロインとしての立ち位置じゃないですか(贔屓目)。可愛いなぁ、もう。
あー、それにしても本当に面白かった。物語を読み終えた時にこんなにも万感が込み上げてくるとは。SAOの物語としてこれで本当の意味で一旦一つの区切りがついたのだろうけど、これから先もまだまだ続いてるシリーズの中でキリトたちがどんな物語を見せてくれるのか、彼ら彼女らにすごく好感を持ったからこそ楽しみだなぁ。